紫外線対策が必要な病気について
紫外線に当たれない難病はたくさんあります。
病気の名前のついているものもそうですが、病後の状態は紫外線に当たらないほうが良いことも分かっています。
そもそも、免疫力をキープするためにも必要なことの一つとして、紫外線対策があります。
以下に紹介している病気は、常に紫外線対策を必要としている難病とアレルギー疾患です。
病名:色素性乾皮症(英語名:Xeroderma Pigmentosum /通称 XP)
おもな症状
病型によって症状は異なります。共通する症状は、日光露光部に発生する皮膚がんです。しかし、すぐに皮膚がんが生じるわけではなく、最初のうちは日光に繰り返し当たるうちに、露光部の皮膚にしみが増え、皮膚が乾燥します。それを繰り返すうちに若くして、露光部に皮膚がんが生じます。ほんの少しの日光暴露で日焼け反応がひどくでたあとにシミや皮膚がんが生じる「サンバーン増強型(A群、B群、D群、F群、G群)」と、日焼けの反応は目立たないまま、若くからしみや皮膚がんが多発する「色素異常型」があります。日本で最も多い病型であるA群では光線過敏症状が非常に強く、生後初めての日光曝露後に健常人と比べてはるかに激しい日焼けの反応が生じます。たとえば、5分外出しただけでも真っ赤に顔が腫れ、涙が出て、翌日には水ぶくれも生じ、その症状は日を追うごとに増し、4日後あたりがピークとなります。眼の白目の部分も紅く充血します。このようなことを繰り返すうちに日に当たる部位に1−2歳でそばかす様の色素斑が目立ってきます。
「色素異常型」のC群やV型では、色素斑や時に脱色素斑が日の当たる部位に幼児期からたくさん生じ、 日光曝露量 にもよりますが、早ければ10歳頃から露光部に皮膚がんが生じ始めます。一方、中年以降皮膚がんが多発して初めてXPと診断される場合もあります。
神経症状については、日本ではA群の患者さんで多くみられます。頸のすわり、寝返り、つかまり立ち、歩行などは、通常よりやや遅れが見られるもののほぼ年齢相応の機能が獲得できます。運動機能のピークは6歳頃で、次第に転びやすいなどの神経症状が出始めますが、通常の意思の疎通は十分に行なえます。学童期前半で聴力レベルの低下が見られ、学童期後半では補聴器装用が必要となります。知的障害の進行と聴力低下に伴い、15歳ころに言語機能は消失します。体のバランスを保ちにくいことも特徴でよく転びます。
色素性乾皮症(指定難病159) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)より
対処法
皮膚症状については、遮光を確実にすることで皮膚がん発症をかなり防げるようになってきました。
しかし、確定診断が遅かった症例では、皮膚がんが次々と生じてきますので、出来てしまった皮膚がんは早めに見つけて、大きくならないうちに切除します。がんの標準的な治療はがんの周辺の正常な部分もつけて切りとるのですが、XPでは切り取った部位に日の当たっていない別の部位から持って来た皮膚を貼付ける(植皮と言います)という方法がとられる事が多いです。神経症状を伴っている患者さんでは、入院をきっかけに体を動かす機会が減ってしまうためか、日常できていた生活動作が出来にくくなることがしばしばみられます。その観点からも、遮光による皮膚がん発症の予防は重要です。
神経症状については、良い治療法がないのが現状です。神経症状が何故おこるかということもまだ研究中です。それが解明されれば良い治療法がみつかると思われます。拘縮によってますます行動範囲が減ることで可動性も悪くなることから、リハビリ訓練もされていますが、どのくらいの負荷をかけるのが良いのかについてもまだ答えが出ていません。尖足や内反足による歩行困難に対しては整形外科で装具をつけて矯正をしたりすることもあります。このように、症状によって、それに対応した治療になりますので、定期的に医師の診察を受けることが必要です。
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色素性乾皮症(指定難病159) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
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病名:全身性エリテマトーデス
おもな症状
膠原病の症状は病気の種類によって異なります。しかし、膠原病は体内で免疫反応、炎症が長く続くため発熱、倦怠感、食欲低下、関節痛、筋肉痛などの症状が共通して見られます。また、起床時の手のこわばり感、寒い場所で手指が紫色や白色に変化するレイノー現象、目や口の乾燥、発疹なども膠原病に頻度の高い症状です。そのほか、病気によって障害される部位は異なりますが、皮膚、関節、腎臓、肺、心臓、神経、筋肉、消化管、目、血管、血液などがダメージを受けることにより症状が引き起こされます。
膠原病の初期症状は微熱、倦怠感、こわばりや関節・筋肉の痛み、指先の冷えなど、ほかの病気でよく見られる症状しか現れないことも少なくありません。そのため発見が遅れることもありますが、これら症状が持続する場合や、発疹や関節の腫れが出現する場合は膠原病の可能性が考えられるため、早めに病院を受診して検査・治療を受けることが大切です。
膠原病では、病気に伴ってさまざまな臓器障害が起こります。たとえば、膠原病による肺の変化の中でもっとも頻度が高く注意が必要なのは“間質性肺疾患”です。間質性肺疾患とは、肺の中に複数ある直径0.1mm程の風船状の“肺胞”という部分の壁に炎症が起こることで、本来は柔軟である壁が硬くなり、膨らみづらくなった結果、酸素を取り込みにくくなってしまいます。初期は無症状ですが、病気の進行とともに労作時の息切れや咳などの症状が現れます。
膠原病の中でももっとも頻度の高い関節リウマチは、最近、高齢者の発症が増えています。高齢者では加齢によって筋肉が衰えるサルコペニアや、介護は必要ないものの活動が弱まるフレイル、腎機能の低下、感染症、骨粗鬆症、貧血などの合併症が生じやすいため注意が必要です。また関節リウマチに血管炎による関節以外の臓器障害が現れる病型を “悪性関節リウマチ”と呼び、国の指定難病になっています。
メディカルノートより
対処法
膠原病は、単一の疾患を表すものではなく、疾患群の総称なので、投薬に関しては、その病気がどのようなものかによりますが、おおむね多く使用するのはステロイドです。どんな薬にも副作用があるように、ステロイドにも副作用が出現する可能性はありますが、それ以上に治療の効果があるという確信がある場合に使用します。あとは、いわゆる免疫抑制剤が多いです。膠原病治療は、ここ30年で長足の進歩を遂げました。予後に関しては、病気にもよりますし、臓器がどの程度痛んでいるかにもよりますので、一概には言えません。症状が慢性的になっても、命にかかわる場合もあるし、そうでない場合もあります。生命予後は確実に改善しました。
もし、膠原病になった場合は、一般内科では解決できない可能性があるので、ぜひとも内科系膠原病専門医を受診されることをお勧めいたします。
日常生活に関しては、過労を避ける、紫外線を避ける、規則正しい生活をする、バランスのとれた食事をするといったことが大切だと思います。関節保護や保温も大切です。膠原病であるかは専門医を受診すれば、少なくともその時点でそうであるかないかははっきりします。少しでも気がかりであれば、お気軽に相談されることをお勧めします。
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全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
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病名:ポリフィリン症
おもな症状
ポルフィリン症の症状はタイプによって異なります。
皮膚型ポルフィリン症は、日光にさらされると活性酸素を産生するポルフィリンが皮膚に蓄積するため、皮膚が日光にさらされると赤み、腫れ、痛みなどの症状を引き起こして水ぶくれやかさぶたができるケースも少なくありません。このような症状を繰り返すことで皮膚が硬くなり、関節運動に支障をきたす場合もあります。また、日光に当たりすぎると肝臓の機能が悪化するタイプもあるため注意が必要です。
一方、急性型ポルフィリン症は非常に強い腹痛・嘔吐・下痢などの消化器症状が発作のように現れること知られており、運動神経麻痺、幻覚や妄想などの精神症状、血圧上昇・頻脈などの循環器症状を伴うこともあります。適切な治療を継続しなければ、呼吸をするための筋肉が麻痺するなどして命を落とすケースもあります。 ポルフィリン症について | メディカルノート (medicalnote.jp)より
対処法
ポルフィリン症の多くは遺伝が関与しているため、明確な予防法は確立していません。
しかし、ポルフィリン症は症状が出るのを防ぐことができる病気でもあります。
具体的には、皮膚型ポリフィリン症では日光を避けることが大切であり、急性型ポルフィリン症では急性症状の引き金と考えられている抗けいれん薬や睡眠薬、経口避妊薬などの使用を避け、感染や過度なストレス、低栄養、アルコール摂取などに注意することが大切です。また急性発作を予防することができる薬剤も使用可能です。
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ポルフィリン症(指定難病254) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
ポルフィリン症について | メディカルノート (medicalnote.jp)
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病名:白皮症
おもな症状
出生時より皮膚、毛髪、眼の色(虹彩の色)が薄く、全身の皮膚が白色調、眼の虹彩の色は青から灰色調を呈する遺伝病です。視力障害や眼の揺れ(眼振)を伴うことが多く、頭髪は白から茶褐色、あるいは銀色を呈します。メラニン色素の合成が減少、あるいは欠損するために起こります。大きく2つのグループに分類され、一つはメラニン色素合成が少ないことによる症状のみを呈する非症候型です。もう一つは、それに加え、出血が止まりにくい、あるいは子供のころから肺炎にかかり易いなどの合併症を伴う症候型です。非症候型8種類と症候型15種類(計23種類)がこれまでに報告されています。
対処法
確立された根治的な治療は、今のところありません。出生時より全身の皮膚が白色調であり、多くの患者さんでは視力障害を伴います。合併症を伴うタイプでは、出血が止まりにくい等の症状も伴います。タイプによっては、成長と共に色が濃くなる患者さんもいます。どのタイプであっても中高年になると、皮膚癌の発生率が高くなりますので、幼少期からの紫外線対策が必要です。生活指導の一環として、乳児期からの不断の紫外線の遮光や生活空間における照度に対する生活指導が重要です。また、時に化粧品によるカバー等が行われます。一部の合併症を伴うタイプでは、中高年に間質性肺炎を発症することもあります。
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眼皮膚白皮症(指定難病164) – 難病情報センター (nanbyou.or.jp)
眼皮膚白皮症(先天性白皮症) 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター (shouman.jp)
病名:日光蕁麻疹
おもな症状
蕁麻疹(じんましん)の原因は多種多様であり、原因が特定できないケースも多くあります。しかし、中には原因が特定できる蕁麻疹もあり、日光蕁麻疹もその一つです。日光蕁麻疹は、日光に当たると出現する蕁麻疹です。日光蕁麻疹は、広くは光線過敏症(※)の中に含まれます。また、太陽光線という物理的な刺激が誘引となり蕁麻疹が出現することから、日本皮膚科学会が策定した「蕁麻疹診療ガイドライン」では、「物理性蕁麻疹」に分類されます。
※光線過敏症:日光に当たることによって出現する、または増悪する皮膚疾患の総称
日光蕁麻疹の特徴として、症状がある日突然発症するという点があります。この時期に蕁麻疹が出るようになった、と覚えている患者さんが多いと言われています。日光を浴びた皮膚に限局して、つよい痒みを伴う蕁麻疹が出現します。その日の天気にもよりますが、数分程度日光を浴びただけでも、蕁麻疹が出現する場合もあります。皮疹は、多くの蕁麻疹と同様に数時間程度で消失します。症状の強い方は、全身症状を伴い、場合によってはアナフィラキシーショックを発症することもあり、注意が必要です。
対処法
日光蕁麻疹の治療方法は、まずは多くの蕁麻疹と同じように「抗ヒスタミン剤」が第一選択となります。抗ヒスタミン剤はヒスタミンをブロックする薬ですが、日光蕁麻疹の患者さんは、蕁麻疹が出現する時の血中ヒスタミン濃度が通常の100倍にも上昇すると言われており、抗ヒスタミン剤のみでは治療効果が乏しいケースが多いです。しかし、軽症例では、効果が得られることもあり、まず行われるべき治療です。
抗ヒスタミン剤が無効な場合は、より強い免疫学的な治療が必要になります。シクロスポリン内服、血漿交換、高用量免疫グロブリン投与などがあります。これらは、専門医によって行われるべき治療であり、副作用もあるため、主に重症な症例に限り慎重に選択されるべき治療法です。また、蕁麻疹が出現する波長の太陽光線を少しずつ浴びることにより、蕁麻疹が出現しにくくなると言われており、このような減感作療法も治療法の一つになります。
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病名:多形日光疹
おもな症状
日光照射によって生じる原因不明の内因性アレルギー性皮膚疾患と考えらえています。頻度は先の日光蕁麻疹よりも多く、それ程稀な疾患ではありません。特に欧米では治療の必要のない軽症例を含めると人口の10~20%が多形日光疹の症状を呈するとされています。青年層の成人女性に好発します。
皮疹の出現は日光に当たった後、遅発性に出現しますが、症例により異なります。照射後4~8時間以内に出現するケースが多いですが、2~3日後に発症するケースもあります。日光蕁麻疹と異なり、皮疹は24時間以上続きます。
臨床症状は露光部に丘疹、紅斑、小水疱などがみられますが、症状は多彩で、湿疹型、小水疱型、局面型、多形紅斑型などに分類されています。時に 日光蕁麻疹との合併もみられます。
大多数は春から夏にかけて発症しますが、真夏は日光に対して耐性(hardening)を示すために、症状はむしろ軽快傾向にあります。従って顔や手背などの年中日に当たっている部位は腕などと比べると皮疹が出にくいようです。季節と共に自然軽快しますが、また翌年に同様に再発することを繰り返す例が多いようです。
日光に対する遅延型(Ⅳ型)アレルギー反応と考えられていますが、その抗原となる内因性物質は明らかではありません。
作用波長は中波長紫外線(UVB)の症例が多いものの長波長紫外線(UVA)あるいはUVB~UVA両領域に過敏性を示す症例も多くみられます。ただし光線テストでは通常のテストでは正常のことも多く、大量あるいは反復照射で元々の皮疹が誘発されることが多いとされます。従って、決まった検査法は確立されていません。
鑑別診断としては薬剤性光線過敏症、光接触皮膚炎、ポルフィリン症、色素性乾皮症、日光蕁麻疹など他の光線過敏症を否定する必要性があります。これらの原因が明確でなければ多形日光疹と診断されますが、形態も作用波長も多彩であるために多形日光疹は単一疾患ではなくいろいろな疾患も混在している可能性もありえます。
時に慢性光線性皮膚炎との鑑別が問題になることもありますが、同症は発症年齢が高齢者であること、苔癬化など慢性湿疹の像を呈すること、長期に持続すること、hardening現象がみられないことなどで鑑別します。
対処法
多形日光疹で出現した皮膚症状は、治療をしなくても数日の間に改善することが期待できますが、治癒過程を促進させること、症状を緩和させることを目的としてステロイド軟膏や抗ヒスタミン薬、痛み止めを用いることもあります。局所を冷やすことで症状緩和を期待することもあります。
多形日光疹は、病気を発症してから時間経過と共に症状が出現しにくくなることが期待できます。症状の項目でも記載したように、同じ年度の中でも時間と共に症状は出にくくなり、数年の経過で症状が現れにくくなります。こうした自然経過が期待できるため、先に挙げたような治療を行いつつ経過を見ることがあります。
多形日光疹は日光にあたることで症状が悪化します。そのため、以下のような紫外線対策を講じることも、症状を予防するためにも大切な観点であるといえます。
- 肌の露出を避けるような服装をすること
- 日差しの強い時間帯の外出を避けること
- 日焼け止めの使用をすること
光線過敏症とは?
上記の病気もそれぞれ光線過敏症の一つといえます。光線過敏症は、普通な方では何でもないような光線曝露で、異常な皮膚症状が生じます。たとえていえば、発熱という症状には、かぜや細菌感染、膠原病など多くの原因があるように、光線過敏症も一つの病気ではなく、多くの原因、機序があります。
光線過敏症には光線に当たらない限りその状態が起こらない狭い意味の光線過敏症と、別の原因の病気が光線に当たることで、誘発されたり悪化したりする広い意味での光線過敏症があります。
光線過敏症 | ひふのクリニック人形町 (atopy.com)