色素性乾皮症のためのUV防護服
株式会社ピーカブーの色素性乾皮症のためのUV防護服
- 色素性乾皮症とは?その特徴と影響
- 色素性乾皮症がなぜUV防護が必要なのか
- 症状とその進行について
- UV防護服の重要性
- UV防護服の製作
- UV防護服を作るきっかけ
- 紫外線測定機を自社に置くために理研インキュベーションプラザに入居を決意
- 空調ファンを付けたい
- たくさんの人に知ってもらいたいからクラウドファンディングにしてほしい
- これからのUV防護服
- 活動
色素性乾皮症とは?その特徴と影響
色素性乾皮症(XP)は、遺伝性の皮膚疾患であり、紫外線に対する感受性が非常に高い病気です。
この疾患を持つ人々は、肌が紫外線に当たると、通常の人以上に深刻な反応を示します。
具体的には、皮膚にしみやそばかすができやすく、また皮膚の乾燥や炎症を引き起こすことがあります。
さらに、XP患者は皮膚がんを発症するリスクが非常に高く、これは紫外線の影響によるものです。
医療機関では、XPを持つ患者の皮膚を保護するため、UV防護の重要性が指摘されています。
このような皮膚の特徴を理解し、適切な対策を講じることが求められます。
1-1. 色素性乾皮症がなぜUV防護が必要なのか
色素性乾皮症(XP)を持つ人々にとって、紫外線防護は基本的かつ必須の対策です。
XPはDNA修復機能の欠如から生じる病気で、紫外線が皮膚細胞にダメージを与え、これが遺伝子の変異やがんの原因となります。
紫外線からの防護がないと、軽微な日光浴でも皮膚炎やしみの悪化を引き起こしやすく、さらなる健康リスクを伴います。
特に、XP患者は通常の人に比べて皮膚がんの発症率が数千倍に達するため、万全なUV対策が不可欠です。
このような理由から、UV防護服やその他の防護対策を徹底することが、彼らに安全で快適な生活を提供する鍵となります。
モロッコの色素性乾皮症の子ども
1-2. 症状とその進行について
色素性乾皮症(XP)の症状は、主に紫外線への曝露後に現れます。
初期段階では、皮膚に微細なしみやそばかすが生じ、徐々にそれが拡大していくことがあります。
また、皮膚が著しく乾燥し、痒みや炎症を伴う際もあります。
時間が経過するにつれ、これらの症状は悪化し、皮膚がんのリスクが高まります。
さらに一部の患者は、光過敏反応により、紫外線に当たると強い日焼けや水ぶくれを引き起こし、その後の回復には1~2週間を要します。
このような病状の進行を防ぐためにも、できうる限りのUV対策が重要です。
UV防護服の重要性
UV防護服は、色素性乾皮症(XP)を持つ方々にとって、生活の質を向上させるための重要なアイテムです。
この特殊な服は、紫外線を効果的に遮蔽し、皮膚へのダメージを防ぎます。
XP患者は、紫外線による皮膚の負担が非常に大きく、少しの日光でも深刻な影響を受けることがあります。
そのため、日常生活や外出時に防護服を着用することが不可欠です。
さらに、UV防護服には、通気性や着心地が考慮されていますので、暑い季節でも快適に過ごせるよう工夫されています。
これにより、外出を気軽に行えるようになり、患者の心身の健康にも寄与します。
UV防護服は、単に紫外線を防ぐだけでなく、日常生活を送るうえで自信や安心感を与える重要なアイテムです。
UV防護服の製作
始まり(つくるきっかけ)
色素性乾皮症は、日光に敏感な皮膚疾患で、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
株式会社ピーカブーは、この症状を持つ方々が日常生活をより快適に送れるよう、UV防護服の開発に取り組みました。
始まりは、2018年患者の会(総会)に参加させていただいたことからでした。
もちろん、22年以上紫外線対策だけのUVカットウエアブランド:EPOCHALを運営してきましたので、色素性乾皮症の患者さんたちの事を知っていましたし、防護服を作ろうと考えたこともありましたが、「完璧」を目指すだけの病気への知識・素材がありませんでした。
この総会では、私たちを知っている人がおおくいらっしゃることに驚きました。
「エポカルさん」と皆さんは読んでくださいました。たくさんの方々がエポカル製品を使っていてくださったのです。
私を動かしたのは、「一度でいいからお友達と一緒に運動会に出してあげたい」という保護者の方のお声でした。
わたしは、何とか1度でいいので、この幼い子たちに運動会に出してあげたいと思いました。
それは、とてもとてもその時は先の見えない困難な事でした。
今までは、防護帽子、サングラス、マスク、手袋、長袖長ズボンなど・・・完全に体の皮膚を覆う格好でないと外に出ることが出来ず、またそれも完ぺきではありませんでした。
患者さんたちは、不安と共に生きていました。
また、運動会=5月10月などまだまだ暑い時、普通の子供たちも汗びっしょりなのに、上記の格好をして外に出て運動することはとても無理・・・。
さらに、XPの子供たちの中でも日本の子供たちに多いA群は、10歳過ぎ頃から神経症状が出て、足元がおぼつかなくなったり目や耳が聞こえづらくなっていってしまうのです。
保護者の方々は、幼いうちに、身体が動くうちに、たくさんの思い出や経験をさせてあげたいと願っていたのです。
帰路に就く時には、「何とかしなくては」という言葉をずっとつぶやいていたことを思い出します。
制作の苦労
UV防護服の開発には多くの課題がありました。
まず、高いUVカット効果を持つ素材を見つけることからです。
・完全遮蔽の素材を見つける(今まで使ったこともありません)
・透明のUVカット効果の高い素材、それも今までXPの皆さんが使っていたものではなく柔らかいものでなければなりません
実は、透明の素材は、少し力が加わっただけでもクリアファイルのように白い線が入ってしまって、視野を妨げてしまうのです。
これが、患者さんのとても困っているポイントでもありました。
また、患者さんの困ったポイントとしては、「自分で製作していた」ので、壊れたり破れたりサイズアウトした時に、何度も自分で縫いなおしたり修理したりしなくてはなりませんでした。
これは、とてもとても大変な作業なだけでなく、落ち度があれば子供を火傷のような日焼けをさせてしまったり、皮膚がんの元を作ってしまうという恐怖に直面する作業でもありました。
さらなる困難なポイントは、デザイン。
もう考えたくもないほど、毎日毎日、寝ている間もずっとずっと考え続けたポイントがありました。
その条件は
・できうる限りのUV遮蔽をすること
・軽くて薄くてUVカット効果が高い素材であること
・汗を吸収してくれるものであること
・身体のほとんどをすっぽり覆うこと
・運動ができる程の軽量性と、動きやすいデザインであること
・サイズ調整ができる事
・夏でも涼しくいられる事
・透明のフェイスガードは、視野が広くUVカット効果が高い事
・透明のフェイスガードは、柔らかく転んでもケガをしないこと
今条件を書き出しても、気分が悪くなるほど「不可能」に近い条件です。
いままでは、通気性と軽さ薄さ、UVカット効果の高さを両立させる製品を考え抜いてきました。
これもかなりのハードルの高さですが、UV防護服は、これの日ではありません!
素材探しは、なんと1年半に及びました。
紫外線測定機を自社に置くために、理研インキュベーションプラザに入居を決意
通気性と快適さを両立させるために、デザインや素材の検討は、気が遠くなるほどの作業で、本当に完成するか不安になるほどのことでしたが、繰り返し行いました。突然見つかった完全遮蔽の素材、そして、あきらめかけていたビニールのUVカット素材は、素晴らしいデータをただきだし、
一気に進みそうになりましたが
空調ファンを付けたい
動きやすさとこの素材の関係をどう「かっこよく」さらに「通気性良く涼しく」「心地よくするか」。
懸命に耳を傾けてくださいました!
この間にも、患者さんたちは、不自由な思いをしているのかと、毎日がつらく感じたこともありました。
製品の詳細
かぶり型のUV防護服/小学生のための動きやすく運動会に出るために
たくさんの人に知ってもらいたいからクラウドファンディングにしてほしい
この製品は、かなりのコストがかかっています。
紫外線測定機は、ものづくり補助金で購入しましたが、当時コロナの最流行時でもあったことから
当社で、すべての患者さんたちに作ってプレゼントすることは難しく、また素材も、ファンも、縫製費も国内生産のため
高価であり、購入いただけるかどうか・・・という価格でした。
製品を作っても、また山が。
そんな時、患者の会の皆さんより「クラウドファンディングをしてほしい」というご要望がありました。
UV防護服もそうですが、「たくさんの人に知ってもらいたい」という思いがあったのです。
私達は、「知ってほしいんですか?」と驚きましたが、病気を理解してもらうことはとても重要なことだとすぐに理解しました。
変な格好をしている
蜂とりみたい
等と言ったことを言われて、親子で泣くような思いをされた人は少なくありません。
色素性乾皮症のりんくんの特別番組を見て、わたしは涙が止まらず、数週間気持ちはずっとりんくんのところにありました。
【参考までに】
以前に一度チャレンジしましたが、とても前向きになれず、スタッフと、どうしよう‥と何度も相談し
踏み切ることにしました。せっかくできた製品、1人でも多くの人に届けよう!
と決めたのです。クラウドファンディングの種類もいくつかあることを知りました。
そして、最終的には、22人の子供たちにUV防護服をプレゼントできました。
とてもとてもとても多くの人たちが協力をしてくださいました。
励ましのお声もいただきました。
毎日が感動でした。
これからのUV防護服
今後、ピーカブーはUV防護服の改良を続け、さらに多くの方々に役立つ製品を提供することを目指しています。
また、他の紫外線に当たる事が出来ない、皮膚疾患の方々にも対応する製品の開発も検討しています。
紫外線に当たる事が出来ない病気とは?
光線過敏症
日光アレルギー
紫外線アレルギー
光アレルギー
日光蕁麻疹
日光じんま疹
日光性皮膚炎
日光過敏症
多形日光疹
光接触皮膚炎
眼皮膚白皮症
尋常性白斑
色素性乾皮症
XP(色素性乾皮症)
ポルフィリン症
慢性光線性皮膚炎
薬剤性光線過敏症
光アレルギー性接触皮膚炎
エリテマトーデス
SLE
膠原病
扁平苔癬
光線性白斑黒皮症
小水疱
慢性光線性皮膚炎
皮膚がん(日光角化症・メラノーマ)
がん
等があります。
UV防護服は、色素性乾皮症の人たちだけのものだと、私たちは思っていましたが、
発売直後から、上記の病気やケガ、痣ややけどなどで悩む方々から次々にお問い合わせが来ました。
海外からも、SNSを通じたり、Mailなどでお問い合せが来ました。
モロッコ、アメリカ、中国、サウジアラビア、インド、イギリス、オーストラリア、ペルーなど。
また、たった1つの製品では、ダメだと気づいたのは、XPかもしれないという診断結果待ちの赤ちゃんを連れた親子が
おいでになった時でした。
どれほどのつらい思いをしてその結果を待っておられるのでしょう。
考えただけでも、涙がこぼれて震えがきてしまいます。
お母さんがおっしゃったのは、「診断されてもどうやって完璧に守ったらいいか分からない」ということでした。
診断は、ほとんどのお子さんが2歳までに行われます。
明らかに日に当たっただけでひどい症状になるからです。
診断直後に、「かぶせるだけ」の完全遮蔽防護服が必要なんだ、と考え、UV防護服ケープの製作に入りました。
(下の写真 真ん中)
さらに、オリジナルでUV防護服を作ってほしいという男性からのご依頼が相次ぎ、まだプロトタイプですが、フロントオープンタイプのセパレーツUV防護服も制作しました。
(下の写真 右)
この取り組みは、NHKでも放送されました。
何よりも「たくさんの人に知ってほしい」という患者の会の方がたの希望に少し近づけた気がして、とても嬉しいご取材でした。
さらに、読売新聞様にもご取材いただきました。
これからの活動
今後も素材研究と機能性製品開発を続け、活動を国内外に広げます。
UV防護服を通じ、多くの紫外線に当たれない患者の存在を知ってもらい、差別やいじめ防止の講座も継続します。
海外の患者会への発信と寄付、WHOへの報告も目指しています。
株式会社ピーカブー
代表取締役 松成紀公子
企画室 スタッフ一同