日焼けマシンや、ジェルネイルのライトと紫外線

人工の紫外線ってなに?

まとう木陰
E P O C H A L

ジェルネイルを固めるUVライト・LEDライトも、日焼けサロンのマシンも、紫外線を出しています。太陽からではなく、自分で選んで浴びる「人工の紫外線」です。

株式会社ピーカブー 松成

株式会社ピーカブー 松成

この記事では、ジェルネイルのライトと日焼けサロンの紫外線について、WHO(世界保健機関)や各国の専門機関、研究論文が何を言っているのかを整理します。リスクの大きさは、この2つでまったく違います。そこを分けて、手を守る紫外線対策までお伝えします。

この記事のポイント
・ジェルネイルのライトは、UVランプもLEDランプも紫外線(UVA)を出します。
・細胞実験ではDNAの損傷が確認されています。ただし、人で皮膚がんが増えると示した研究はまだありません。専門機関は「日焼けマシンよりはるかに低いリスク」と評価しています。
・ジェルネイルを楽しむ方は、日焼け止めや指先の出る手袋で手を守る方法があります。
・日焼けマシンは、WHOの専門機関IARCが2009年に「ヒトに対して発がん性がある」と分類しました。
・WHOは18歳以下の使用を禁止するよう勧告しています。ブラジルとオーストラリアは、商業用の日焼けマシンを禁止しました。

ジェルネイルのUVライトと日焼けサロンは「人工の紫外線」

環境省の「紫外線環境保健マニュアル2020」は、太陽以外の紫外線の例として、アーク溶接、紫外線殺菌灯、産業用の紫外線ランプなどを挙げています。紫外線ランプは、紫外線で樹脂を固める技術に広く使われています。ジェルネイルのライトも、同じ原理です。

その中で、日焼けサロンとジェルネイルは、美容のために自分で選んで浴びるものです。だからこそ、知ったうえで選ぶことが大切になります。

ジェルネイル及び日焼けマシンが出すUVA

ジェルネイルのUVライト・LEDライトの紫外線と、わかっているリスク

ジェルネイルのライトが出す紫外線はUVA(LEDライトも同じ)

ジェルネイルは、爪に塗ったジェルにライトを当てて固めます。研究論文によると、ジェルネイル用のライトが出すのは340〜395nmの光で、紫外線のうちUVAにあたります。UVBはほとんど出しません(Zhivagui ほか, Nature Communications, 2023)。

「LEDライトなら紫外線は出ない」と思われがちですが、米国の皮膚がん財団で皮膚科医は、UVランプもLEDランプも紫外線を出す、と説明しています(Skin Cancer Foundation, 2023年)。

細胞実験でDNAの損傷が確認された

2023年、カリフォルニア大学サンディエゴ校のチームが、ジェルネイル用ライトを人とマウスの細胞に当てる実験を発表しました。結果は次のとおりです。

照射の条件 結果
20分を1回 細胞の約20〜30%が死んだ
20分を3日連続 細胞の約65〜70%が死んだ
共通 DNAの損傷と、活性酸素による変異が増えた。ミトコンドリアの働きも落ちた

出典:Zhivagui ほか, Nature Communications 14, 276 (2023)。日本語の解説はForbes JAPAN(2023年2月)にあります。

ジュエルネイル用ライトによる死んだ細胞の割合

論文は、ジェルネイルのライトを使っていた人の手や爪のまわりに皮膚がんができた、という過去の症例報告(2009年、2019年)にも触れています。

ただし、人で皮膚がんが増えるとは示されていない

この研究は、培養した細胞に直接ライトを当てたものです。人の手でがんが増えることを示したものではありません。研究チーム自身も、リスクを理解するには大規模な疫学研究が必要だとしています。

オーストラリアの放射線防護機関ARPANSAは、この研究に対して「ネイルサロン通いをやめる必要はない」という見解を出しました。実験の照射時間は実際のネイルよりずっと長く、細胞実験の結果はそのまま人には当てはめられない、という理由です。日焼けマシンには皮膚がんを増やす質の高い証拠があるが、ネイルのライトにはそれがない、とも述べています(ARPANSA, 2023年1月)。

皮膚がん財団の皮膚科医も、最も強いネイルライトでも紫外線のリスクは中程度で、日焼けマシンよりはるかに低い、と評価しています。

日焼けマシンとジェルネイルのライトの違い

日焼けマシン ジェルネイルのライト
浴びる範囲 全身 手(または足)
発がん性の分類 IARCがグループ1に分類(2009年) 分類されていない
人での証拠 悪性黒色腫などが増えるという疫学研究がある 症例報告と細胞実験のみ。疫学研究はまだない
専門機関の評価 WHOが18歳以下の使用禁止を勧告 ARPANSA:通常の使用なら健康上の懸念は小さい

日焼けマシンのリスクと世界の規制は、このあとの章で詳しくお伝えします。

ジェルネイルの紫外線対策:手を守る3つの方法

リスクは低いと評価されていますが、UVAは肌の老化にも関わります。手のシミやシワが気になる方、ネイルの頻度が高い方は、次の方法があります。

1. 施術の前に、手に日焼け止めを塗る

皮膚がん財団は、UVAとUVBの両方を防ぐ日焼け止めを、ライトに当たる約20分前に塗ることを勧めています。ただし、爪の下にできるがんは日焼け止めでは防げない、とも注意しています。

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2. 指先の出る手袋をつける

ARPANSAは、指先の出る手袋(フィンガーレスグローブ)の着用を挙げています。爪だけを出して、手の甲と指を覆う方法です。

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3. 紫外線を使わない方法を選ぶ

皮膚がん財団は、通常のマニキュアなら自然乾燥か、紫外線の出ない送風機で乾かすのが最も安全だとしています。

日焼けサロン(日焼けマシン)の危険性:IARCは「発がん性あり」と分類

たばこやアスベストと同じ分類

2009年7月、WHOの国際がん研究機関(IARC)は、紫外線を出す日焼け装置を「ヒトに対して発がん性がある」(グループ1)に分類しました(IARC, 2009年7月29日)。グループ1は、発がん性の根拠が最も確かな区分です。当時の報道は、たばこやアスベストと同じ最高レベルになった、と伝えています(J-CASTニュース, 2009年)。

日焼けマシンと皮膚がんのリスクはどのくらいか

WHOは2017年の発表で、次の数字を示しています(WHO, 2017年6月21日)。

項目 WHOが示した数字
日焼けマシンを一度でも使った人 悪性黒色腫(メラノーマ)のリスクが20%高い
35歳未満で使い始めた人 悪性黒色腫のリスクが59%高い
日焼けマシンが原因と推計される皮膚がん 米国・欧州・オーストラリアの合計で、非黒色腫皮膚がんが年間45万件超、悪性黒色腫が年間1万件超

WHOは、皮膚がんのほかに、日焼け(やけど)、皮膚の早い老化、目の炎症、免疫の働きの低下も挙げています。

日焼けマシンと悪性黒色腫のリスク

日焼けマシンの光は、真昼の太陽より強いことがある

WHOは、日焼けマシンが熱帯の正午の太陽に匹敵する強さの紫外線を出すと説明しています。オーストラリアのがん協議会によると、禁止前の同国の規格では「夏の正午の太陽の最大3倍」まで認められていました。2008年の調査では、15%のマシンがこの基準を超え、夏の太陽の6倍のUVAを出すものもありました(Cancer Council Australia)

日焼けマシンの紫外線は、真夏の太陽より強いことがある

「下地焼け」は肌を守らない

「先に少し焼いておけば、海で焼けにくい」という話があります。環境省のマニュアルは、日焼け(サンタン)の防御効果は小さく、SPF4程度としています。米国小児科学会の声明も、休暇前の日焼けの効果はSPF3程度で、DNAの損傷を防ぐ効果は事実上ない、としています(当サイトの日本語訳)。

日焼けサロンの規制:WHOは「18歳以下は禁止を」と勧告

「WHOが日焼けサロンを禁止している」と言われることがあります。正確には、WHOに各国の店を禁止する権限はありません。WHOが行っているのは勧告です。

環境省のマニュアルは、WHOが「18歳以下の使用を禁止するよう勧告」していると紹介しています。2017年にWHOは、各国の政策担当者向けに対策をまとめた冊子を出し、「各国は禁止か制限かを検討する必要がある」と呼びかけました。

国・機関 内容
WHO 18歳以下の使用を禁止するよう勧告。各国に禁止または制限の検討を求めている
ブラジル 商業用の日焼けマシンを禁止
オーストラリア 商業用ソラリウムを2015年1月1日から禁止(西オーストラリア州は2016年1月1日から)
米国 FDAが製品に「18歳未満の人には使用しないこと」という警告表示を求めている
世界全体 40を超える国や州が、禁止または規制を導入(2017年時点)

出典:WHO(2017年)、Cancer Council Australia、米国FDA、環境省

オーストラリアが年齢制限ではなく全面禁止に踏み切った理由の一つは、ルールが守られなかったことでした。メルボルンの調査では、業者の80%が、年齢を偽った10代の利用を認めていました。

 

人口の紫外線をめぐる動き

日本の日焼けサロンの状況

2009年の報道によると、当時の日本には日焼けサロンの専門店が約500店あり、スポーツジムや入浴施設などを含めると約1,000か所に日焼けマシンがありました。業界団体は自主的なガイドラインを設けていましたが、厚生労働省も経済産業省も「管轄外」としていました(J-CASTニュース, 2009年)。

東京都は2015年6月、「日焼けマシンでのやけどに注意!」という注意喚起を出しています。紹介されている事例は次のようなものです(東京都生活文化局)。

・弱い光線で全身を焼いたが、帰宅後に全身が真っ赤になり、2日間だるくて動けず、水ぶくれができた。
・焼きすぎて皮膚が真っ赤になり、やけどと診断された。
・当日は少し痛む程度だったが、4日後に激痛が出て皮膚科を受診した。

東京都は、肌の白い人、過去に日焼けで肌にトラブルがあった人、光線過敏の人は特に注意が必要だとしています。目を守るゴーグルの着用も呼びかけています。

現在の国内の規制については、今回確認できた公的資料がありませんでした。ここでは2009年と2015年の情報としてご紹介しています。

子どもと10代は、人工の紫外線からとくに守りたい

日焼けマシンのリスクは、若いときに使い始めるほど高くなります。WHOが18歳以下の禁止を勧告し、米国FDAが18歳未満への警告表示を求めているのは、そのためです。米国小児科学会も、10代は日焼けサロンに行くことを強く控えるべきだ、としています(米国小児科学会の声明(日本語訳))。

日本でも、地上に届く紫外線は長い目で見て増えています(「日本の紫外線は本当に増えているの?」)。ふだんの太陽の紫外線に、自分から人工の紫外線を足す必要はありません。

ジェルネイルと日焼けサロンの紫外線 Q&A

Q. ジェルネイルを続けると、皮膚がんになりますか?

人でがんが増えることを示した研究は、今のところありません。細胞実験ではDNAの損傷が確認され、まれな症例報告もありますが、専門機関は通常の使用であれば健康上の懸念は小さいと評価しています(ARPANSA)。心配な方は、日焼け止めや指先の出る手袋で手を守ることができます。

Q. LEDライトなら紫外線は出ませんか?

LEDライトも紫外線を出します。皮膚科医は、UVランプとLEDランプは名前が違っても、どちらも主にUVAを出すと説明しています(Skin Cancer Foundation)。

Q. WHOは日焼けサロンを禁止しているのですか?

WHOが禁止しているわけではありません。WHOは、18歳以下の使用を禁止するよう各国に勧告し、禁止や制限の検討を求めています。実際に商業用の日焼けマシンを禁止したのは、ブラジルやオーストラリアなどの国です。

Q. 日焼けサロンは、太陽で焼くより安全ですか?

安全とは言えません。IARCは日焼けマシンを発がん性のある区分に分類しています。WHOによると、一度でも使った人は悪性黒色腫のリスクが20%高く、35歳未満で使い始めた人は59%高くなります(WHO, 2017年)。

Q. ビタミンDをつくるために、日焼けマシンを使ってもよいですか?

おすすめできません。米国小児科学会は、ビタミンDを増やす目的で人工の紫外線を浴びることは避け、食事やサプリメントで補うよう勧めています(日本語訳)。

Q. 日焼けマシンでやけどをしたら、どうすればよいですか?

環境省のマニュアルは、日焼けしたらなるべく早く冷たいタオルなどで冷やすこと、水ぶくれなど症状が強いときは皮膚科を受診することを勧めています。東京都の事例では、数日たってから強い痛みが出た方もいます。お店とのトラブルは、お住まいの地域の消費生活センターに相談できます。

Q. ふだんの紫外線対策は、何から始めればよいですか?

帽子、長袖、日陰、時間帯、日焼け止めの5つが基本です。「紫外線対策5か条」と「UVインデックスの見方」をご覧ください。

まとめ:ジェルネイルも日焼けサロンも、知ったうえで選ぶ

日焼けマシンは、発がん性が確かめられ、WHOが18歳以下の禁止を勧告し、国として禁止したところもあります。ジェルネイルのライトは、細胞実験で損傷が確認された段階で、人でのリスクは低いと評価されています。同じ人工の紫外線でも、わかっていることの重さが違います。

どちらも、知ったうえで選ぶことができます。肌は一生つきあうものです。浴びなくてよい紫外線は、浴びない。それがいちばん確実な対策です。

出典

IARC「Sunbeds and UV Radiation」(2009年7月29日)
https://www.iarc.who.int/news-events/sunbeds-and-uv-radiation/

WHO「More can be done to restrict sunbeds to prevent increasing rates of skin cancer」(2017年6月21日)
https://www.who.int/news/item/21-06-2017-more-can-be-done-to-restrict-…

WHO「Artificial tanning devices: public health interventions to manage sunbeds」(2017年)
https://www.who.int/publications/i/item/9789241512596

環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」
https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf

Cancer Council Australia「Solariums」
https://www.cancer.org.au/about-us/policy-and-advocacy/prevention/uv-r…

米国FDA「Sunlamps and Sunlamp Products (Tanning Beds/Booths)」
https://www.fda.gov/radiation-emitting-products/home-business-and-ente…

東京都生活文化局「日焼けマシンでのやけどに注意!」(2015年6月)
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/attention/documents/kigaikiken_hiyake.pdf

J-CASTニュース「国内1000カ所『日焼けマシン』発がん高リスクで『どうなる』」(2009年8月)
https://www.j-cast.com/2009/08/03046451.html

Zhivagui M ほか. DNA damage and somatic mutations in mammalian cells after irradiation with a nail polish dryer. Nature Communications. 2023;14:276.
https://doi.org/10.1038/s41467-023-35876-8

ARPANSA「No need to stop visiting the nail salon」(2023年1月)
https://www.arpansa.gov.au/no-need-stop-visiting-nail-salon

The Skin Cancer Foundation「Are the UV Lamps in the Dryers at the Nail Salon Safe to Use?」(2023年1月)
https://www.skincancer.org/blog/ask-the-expert-are-the-uv-lamps-in-the…

Forbes JAPAN「UV光を照射するネイル用ドライヤーに皮膚がんを引き起こすおそれ」(2023年2月)
https://forbesjapan.com/articles/detail/60557

この記事は、公的機関と研究論文をもとにした情報提供です。診断や治療に代わるものではありません。肌に気になる変化がある方は、皮膚科を受診してください。(2026年10月時点の情報)

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