色素性乾皮症(XP)のためのUV防護服開発の軌跡

Contents
  1. 株式会社ピーカブー・エポカルの挑戦
  2. はじめに:難病の方々のための製品づくりに立ち向かう決意
  3. 色素性乾皮症(XP)とは
  4. 第1章:出会いと決意(2017年頃)
  5. 第2章:研究開発の基盤づくり(2020年)
  6. 第3章:防護服の研究開発(2020-2021年)
  7. 第4章:3つのタイプのUV防護服を開発
  8. 第5章:クラウドファンディングの成功(2021年8月)
  9. 第6章:メディア掲載の広がり
  10. 第7章:国内での広がり
  11. 第8章:世界への展開
  12. 第9章:医療機関との連携
  13. 第10章:啓発活動の継続
  14. 第11章:これからの展望
  15. プレスリリース一覧
  16. 関連リンク
  17. おわりに

株式会社ピーカブー・エポカルの挑戦

はじめに:難病の方々のための製品づくりに立ち向かう決意

紫外線対策専門ブランド「エポカル(EPOCHAL)」を展開する株式会社ピーカブーは、色素性乾皮症(XP)という難病を持つ子どもたちのために、特別なUV防護服の開発に取り組んできました。この記事では、2017年から現在まで続く、UV防護服開発の歴史とストーリーを時系列でご紹介したいと思います。

色素性乾皮症(XP)とは

色素性乾皮症(Xeroderma Pigmentosum、通称XP)は、約2万2千人に1人の割合で発症する指定難病です。日本には約500人の患者さんがいると推定されています。

XPの主な特徴

  • 紫外線によるDNA損傷を修復する機能が遺伝的に低下
  • 紫外線に当たると激しい日焼け症状が出現
  • 皮膚がんの発症リスクが健常者の約2000倍
  • 進行性の神経症状を伴うケースが多い

第1章:出会いと決意(2017年頃)

患者の会への参加

エポカルブランドを20年近く展開してきた株式会社ピーカブーは、色素性乾皮症(XP)のお子さんを持つ有元さんとの出会いをきっかけに、患者の会に参加しました。

そこで聞いた切実な声:

  • 「色素性乾皮症という病気を多くの人に知ってもらいたい」
  • 「XPの生活や格好を悪く言わないでほしい」
  • 「運動会にお友達と一緒に参加させてあげたいのに、暑くてとてもこの服では数分と持たないんです」

特に最後の声に、母親だけで構成される株式会社ピーカブーのスタッフ一同が胸を打たれました。

UV防護服制作の決意

患者の会で聞いた声をきっかけに、株式会社ピーカブーは本格的なUV防護服の開発を決意します。XPの子どもたちが:

  • 運動会に参加できるように
  • 真夏でも快適に外出できるように
  • たった1枚で完全に紫外線から身を守れるように

約20年間紫外線対策だけを考えUV対策ウエアを企画・制作してきた知識と経験を活かし、この願いを実現するプロジェクトが始動しました。

第2章:研究開発の基盤づくり(2020年)

和光理研インキュベーションプラザへの入居

2020年3月、株式会社ピーカブーは大きな一歩を踏み出しました。独立行政法人中小企業基盤整備機構、理化学研究所、埼玉県、和光市が連携して運営する「和光理研インキュベーションプラザ」への入居申請を行い、厳格な審査を経て、入居を許可されたのです。

所在地: 〒351-0104 埼玉県和光市南2-3-13 和光理研インキュベーションプラザ305号室

この入居により、理化学研究所の研究者との連携が可能となり、UV防護服の研究開発が本格化しました。これは、わたしの苦悩の始まりでもありました。製品開発は、できてしまえば「ああいいね」的なものでも、素材から肌を隠す機能性、暑さをしのぐためのものをどうするかを考えるまで・・・考え抜き、探し抜き、説得し抜き、説明し抜いた数年でした。

紫外線測定器の導入

理化学研究所の先生のご指導のもと、さらに皮膚科医師(市橋正光先生/神戸大学名誉教授)・科学者(佐々木政子先生/東海大学名誉教授)の先生方のご協力を得て、国のものづくり補助金を活用し、本社内に紫外線測定器を設置しました。

この設備により:

  • 素材と製品のUVカット効果の測定が即時で可能に
  • 新製品開発の効率化と品質向上を実現
  • 遮蔽率99.9%以上の完全遮蔽素材の検証が可能になりました

第3章:防護服の研究開発(2020-2021年)

徹底的な研究と試作

理研インキュベーションプラザに入居後、エポカルは防護服の研究を重ねました:

  1. 素材検査・研究
    • 完全遮蔽素材(99.99%紫外線カット)の選定
    • UVカット率99.7%の透明ビニールの検査
    • 3重構造(遮光素材+酸化チタン練り込み素材+特殊加工)
  2. デザイン研究
    • 上半身プラスαを完全に防護する設計
    • 視界を確保しながら顔全体を守るフードデザイン
    • 動きやすさを考慮した機能性デザイン

株式会社空調服との協業

真夏でも快適に着用できるよう、株式会社空調服の協力を得て、ファン付きUV防護服の開発に取り組みました。

開発のポイント:

  • ファンによる送風機能で気化熱を利用
  • 暑い時季の運動会への参加を可能に
  • 日常的な外出でも快適に使用できる工夫

第4章:3つのタイプのUV防護服を開発

研究開発の結果、3つのタイプのUV防護服が誕生しました:

1. ファン付きUV防護服(子ども用)

  • サイズ:120cm、150cm
  • 特徴:空調服のファンで真夏でも涼しく
  • 用途:運動会、外遊び、通学

2. ファン付きUV防護服(大人用)

  • サイズ:M、L、XL
  • 特徴:大人の患者さんにも対応
  • 用途:仕事、日常生活での外出

3. UVケープ(0-7歳用)

  • 対象:赤ちゃんから幼児まで
  • 特徴:被るだけで簡単に装着
  • 用途:乳幼児期の外出、散歩

第5章:クラウドファンディングの成功(2021年8月)

プロジェクトの立ち上げ

2021年8月14日、株式会社ピーカブーはCAMPFIREでクラウドファンディングをスタートしました。

プロジェクトの目標:

  • XP連絡会へ22枚(後に調整)のUV防護服を寄贈
  • 色素性乾皮症という病気を広く知ってもらう
  • UV防護服の製品化と販売開始

大きな反響と目標達成

クラウドファンディングは大きな反響を呼びました:

  • 開始6日目で第一目標達成
  • 最終的に目標金額の176%、153万5千円を達成
  • 多くの方々から応援のメッセージをいただく

この成功により、22人のXPの子どもたちにUV防護服をプレゼントすることが実現しました。

第6章:メディア掲載の広がり

NHKでの放送

2021年11月3日、NHK首都圏ニュースで色素性乾皮症とUV防護服について放送されました。

  • 午前2回、午後1回の合計3回放送
  • 色素性乾皮症の子どもたちの現状
  • 防護服の開発ストーリー
  • 紫外線測定器による研究の様子

その他のメディア掲載

新聞掲載:

  • 朝日新聞(2020年9月24日):「ママが育てて18年/紫外線対策ウエア」

雑誌掲載:

  • STORY(2021年2月号):代表松成のインタビュー
  • 産業新潮(2024年7月号):「人の肌と健康を紫外線から守る」
  • たまひよ(2023年2月27日):「運動会に参加させてあげたい」特集

WEB掲載:

  • レタスクラブ
  • 大宮経済新聞
  • ビューティーポスト

第7章:国内での広がり

幅広い患者さんからのご注文

UV防護服は、XPだけでなく様々な方々からご注文をいただけるようになりました:

  • 国内の患者さん:
    • 赤ちゃん、子ども、大人まで幅広い年齢層
    • 色素性乾皮症(XP)の患者さん
    • 光線過敏症の患者さん
    • その他紫外線に当たれない疾患をお持ちの方

日常生活用具給付制度の対象に

多くの市町村で、UV防護服が日常生活用具給付制度の対象となりました。

これにより:

  • 経済的負担の軽減
  • より多くの患者さんが購入しやすく
  • 自治体からの認知と理解が広がる

第8章:世界への展開

海外からの注目

UV防護服は日本国内だけでなく、海外からも注目を集めています:

  • **カナダ:**ディストリビューター契約を締結
  • **イギリス:**XP専門医とのコラボレーション
  • **アメリカ:**シリコンバレーでのプレゼンテーション

イギリス・セントトーマスホスピタルとの連携

ロンドンのセントトーマスホスピタルのXP専門医とつながり、現在では毎月展示を行っていただいています。

この連携により:

  • 海外のXP患者さんへの情報提供
  • 医療現場での製品の認知向上
  • 国際的なネットワークの構築

シリコンバレーでのプレゼンテーション(2024年1月)

2024年1月17日〜26日、経済産業省主催のJ-StarX 起業家イベント参加型シリコンバレー派遣プログラム(Well Being関連分野)に参加しました。

プレゼンテーションの内容:

  • UV防護服の開発ストーリー
  • 色素性乾皮症について
  • 世界中の紫外線に当たれない人々への支援

この活動がきっかけで、JETROのJ-starXプログラムに採択され、世界展開への道が開けました。

第9章:医療機関との連携

神戸大学医学部附属病院との協力

神戸大学の先生方に防護服をご評価いただき、現在では:

  • XPと診断された患者さんにエポカルのUV防護服を推奨
  • 医療現場からのフィードバックを製品改良に活用
  • 遺伝子診断と同時に適切なUV対策製品の情報提供

神戸大学は、色素性乾皮症の研究でも世界をリードしており、2021年には計算創薬法によるXP-D群(R683W変異)の治療薬候補を発見するなど、画期的な研究成果を上げています。

第10章:啓発活動の継続

紫外線講座での取り組み

株式会社ピーカブーが行う紫外線講座では:

  • テーマ:「いじめがないように」
  • 内容:XPのような太陽の光に当たることができない子ども・人たちについて
  • 目的:誰もが弱いところ、苦手なところをもって生まれてきていることを知りいじめのない、思いやりのある世界に!子供たちの理解を得たい。

講座の実績

  • 朝霞市立図書館での講座開催
  • 和光市図書館での紫外線対策講座
  • 幼稚園、保育園、中学・高校・大学での出張講座 など

NO!UVマーク

色素性乾皮症の子どもがいるお父さんがデザインした「NO!UVマーク」を製品に採用:

  • **デザインの意味:**染色体の数46本で太陽の形を表現
  • **8本の黄色:**色素性乾皮症のタイプ(A〜G、V型)を表現
  • メッセージ:「I wanted you to know that some people can’t be exposed to UV light(紫外線に当たれない人がいることを知ってください)」

このマークの認知が進むことで、心無い言葉を受けることが減ることを願っています。

第11章:これからの展望

すべての紫外線に当たれない人たちのために

株式会社ピーカブー/エポカルは、これからも:

  1. XPだけでなく:
    • 光線過敏症
    • 膠原病
    • アトピー性皮膚炎
    • その他紫外線に敏感な方々
  2. 世界中の:
    • 日本国内の患者さん
    • 海外の患者さん
    • まだ診断されていない潜在的な患者さん

すべての紫外線に当たれない人たちの応援をしていきます。

継続的な製品開発

今後も:

  • 赤ちゃん世代向けの新製品開発
  • より快適で使いやすい防護服の研究
  • 新しいUVカット技術の導入
  • 医療機関との連携強化

プレスリリース一覧

株式会社ピーカブーのUV防護服に関する主なプレスリリース:

2021年

2022年

2023年

2024年

すべてのプレスリリース詳細は、PR TIMESおよび株式会社ピーカブー公式サイトでご覧いただけます。

関連リンク

おわりに

株式会社ピーカブー/エポカルのUV防護服開発の歴史は、一人の母親の思いから始まり、患者の会での出会いを経て、今では世界中のXPや光線過敏症の患者さんを支援する大きなプロジェクトへと成長しました。

「運動会に参加させてあげたい」 「紫外線に当たれない人がいることを知ってください」

この2つの願いを胸に、これからも株式会社ピーカブー/エポカルは挑戦を続けていきます。


株式会社ピーカブー
代表取締役 エポカルプロデューサー
松成紀公子

〒351-0104 埼玉県和光市南2-3-13 和光理研インキュベーションプラザ305号室
TEL: 048-458-3015
FAX: 048-458-3017


この記事は、色素性乾皮症(XP)および光線過敏症について、一人でも多くの方に知っていただくために作成しました。ご理解とご協力をお願いいたします。

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